40代で未経験の仕事に転職することは、簡単ではありません。
企業からすれば、伸びしろがあって育成もしやすい若い世代を雇用したいと思うのは自然で、あえて「40代の未経験者」を採用するメリットがないからです。
とはいえ、40代で未経験の仕事に転職することが無理というわけではありません。
コミュニケーション能力の高さが強みになる営業職は、社会経験の豊富な40代を積極的に採用していますし、介護職のように、ある程度年齢を重ねた人材のほうが受け入れられやすい業界もあります。
さらに、未経験の業界であっても、前職の経験やスキルが活かせる場合は、キャリア転職も可能です。
そこで今回は、40代で未経験の仕事に転職した146人アンケート調査を実施し、転職理由や転職してよかった点などについて聞いてみました。
40代で未経験の仕事への転職を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。
- 調査対象:40代で未経験の仕事に転職をした人
- 調査期間:2020年12月05日~19日
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 調査人数:146人(女性81人/男性65人)
目次
40代で未経験の仕事に転職した理由ランキング
40代で未経験の仕事に転職した146人に転職理由を聞いたところ、1位は「やりたい仕事・新しい仕事への挑戦(19.9%)」でした。
一方、「倒産・解雇・契約終了(15.8%)」や「希望の仕事に就けなかった(8.9%)」など、望まない理由で未経験の仕事に転職した人も少なくありません。
1位 やりたい仕事・新しい仕事への挑戦
- 昔からやってみたかった仕事に、真剣に取り組みたくなった(48歳 女性)
- 今まで経験したことのない仕事にチャレンジするには今が最後になるのではと感じた(42歳 女性)
- 今までの仕事は食いつなぐためだけでやっていた。本当に興味のある仕事に転職できるのは、この年齢が限界だと思ったから(40歳 男性)
40代で未経験の仕事に転職した理由1位は、「やりたい仕事・新しい仕事への挑戦」でした。
「今の仕事にやりがいを感じられず、新しい仕事にチャレンジしたくなった」「やりたい仕事ができた」といった理由で転職に踏み切る人が多くいました。
40代という年齢から、これ以上年齢が上がると転職は厳しいと判断し、一念発起して未経験の仕事に飛び込む人も多いようです。
また女性の場合、20~30代は家庭や子育てと両立できる仕事をし、子どもに手がかからなくなった40代で本来やりたかった仕事に挑戦したというコメントも目立ちました。
2位 倒産・解雇・契約終了
- 長年勤めていた会社が倒産し、急いで次の仕事を探したため(49歳 男性)
- 会社の業績が悪く派遣切りにあって、選ぶ余裕がなかった(40歳 女性)
- 自営を失敗してしまい、とりあえずの収入が欲しかった(41歳 男性)
40代で未経験の仕事に転職した理由2位は、「倒産・解雇・契約終了」でした。
会社の業績悪化による「解雇」「倒産」「派遣切り」などで、やむなく退職し、未経験の仕事に就かざるをえなかった人が多くいました。
「すぐに就職先を見つけなければ」との焦りから望まない仕事に就いたり、本来やりたい仕事が見つかるまでの『仮の転職』をした人もいるようです。
3位 収入アップのため
- 子どもが3人おり、高校や大学など大変なお金がかかるから(41歳 女性)
- コロナで夫の給料が下がり、これまでの仕事より少しでも多く給料がもらえるところをと考えた(40歳 女性)
- 年収がなかなか上がらないため、老後の生活を考え、思い切って転職することを選んだ(40歳 男性)
40代で未経験の仕事に転職した理由3位は、「収入アップのため」でした。
給与が少ない、昇給の見込みがないといった給与面への不満から、収入アップを目的とした転職をする人も多いです。
昨今の社会情勢による業績悪化で給与が下がったことから、より高収入を得られる業種にシフトした人も。
また40代になると、子どもの教育資金の問題が現実味をおび、これまでの収入に不安を感じる家庭も増えています。
4位 ライフスタイルの変化
- 子どものために時間に自由がきく仕事に変えたかった(40歳 女性)
- アパレルの仕事をしていたが、子どもが生まれ、土日祝休みの仕事がいいと思い転職した(40歳 女性)
- 子どもが就学年齢に達し自分の時間が取れるようになったことから、時短の契約社員をやめ、フルタイムで正社員として働くことにした(42歳 女性)
40代で未経験の仕事に転職した理由4位は、「ライフスタイルの変化」でした。
女性の場合は、結婚や出産、配偶者の転勤、離婚といった生活の変化による転職が目立ちました。
子どもの生活スタイルに合わせ、土日休みの仕事やパートタイマーにシフトする人も。
反対に、子どもに手がかからなくなったタイミングで、パートからフルタイム勤務に戻る人も多いようです。
女性の社会進出が進んで久しい現代でも、家事・育児の中心を担い、ライフステージの変化により仕事や生活スタイルを大きく変えざるを得ないのは、ほとんどの場合女性であることが伺えます。
5位 希望の仕事に就けなかった
- もともとはIT業界でシステムエンジニアをしていたが、会社が倒産。業界内で転職しようとしたが、採用されなかったから(47歳 男性)
- 求人が少ないため、未経験でもチャレンジするしかない状況だった(42歳 男性)
- 都内から地方への帰郷に伴う転職で、自分のスキルを活かした中途採用が見つからなかったため(49歳 男性)
40代で未経験の仕事に転職した理由5位は、「希望の仕事に就けなかった」でした。
- 同業種で条件のよい求人がなかった
- 年齢がネックとなり、仕事を選ぶ余地がなかった
など、これまでの経験やスキルを活かせる仕事に就けなかったため、未経験の仕事を選ぶしかなかった人もいました。
また、配偶者の転勤に伴う引越しやUターンのために地方で転職した人からは、「やりたい仕事がなかった」との声も。
地方は都市部と比べて業種や職種が限られるため、「今までしていた仕事自体がない」といった状況もあるようです。
6位以下のコメントを紹介
- 前職は建設業で体を使う職種だったが、年齢を重ねて体力がもたなくなったため(44歳 女性)
- 未経験の人が多数活躍している業種だったため(40歳 男性)
- 面接に受かりやすいため介護職に転職した(44歳 女性)
立ち仕事、体を使う仕事、夜勤のある仕事などがキツくなり、体力的に無理のない仕事に転職した人も。
また、「未経験でも募集可能だったから」「年齢に関わらず就ける仕事だったから」「人材不足の業界だから」など、採用されやすさで転職先を選んだ人もいました。
未経験の仕事に転職するために準備したこと1位は「業界や仕事内容のリサーチ」
未経験の仕事に転職するために準備したことがあるか聞いたところ、「ある」と回答したのは39.7%(146人中58人)。
4割に満たないことがわかりました。
「ある」と回答した人にどんな準備をしたか聞いたところ、最も多かったのは「業界や仕事内容のリサーチ(24.1%)」でした。
働きたい業界の動向や、仕事内容、求める人物像などをリサーチし、転職活動に備えたようです。
一方で、20代や30代の転職者に多い「資格取得」や「職業訓練に通う」などは、40代では少なめです。
40代になると、
- 働くうえでのスキルはすでに身についている
- 未経験とはいえ、ある程度これまでの経験やスキルを活かせる業界や職種を選ぶ人が多い
といった理由から、転職のために新たに資格取得をしたり、スキルを身につけたりする必要はないのかもしれません。
40代転職後の年収は「下がった」が56.2%
40代で未経験の仕事へ転職したことにより、年収がどう変化したか聞いたところ、「上がった」が28.1%、「変わらない」が15.7%、「下がった」が56.2%という結果に。
半数以上の人は、転職によって年収が下がっています。
収入減は未経験からのスタートによる待遇の悪化が理由
- 以前は管理職だったが、転職先では一般職なため(42歳 男性)
- 経験や資格がなかったため給与は下がった(42歳 男性)
- システムエンジニアとして20年以上働いており、そこから未経験の職種に転職したため、基本給が大きく減った(43歳 男性)
転職による収入減は、「未経験からのスタートになったこと」が主な理由となっています。
40代ともなると、年齢や経験に伴う昇給や役職手当により、前職である程度の給与をもらっていた人も多いと思います。
しかし、前職の経験や実績が活かされない異業種に転職した場合は、給与は下がるケースが大半です。
転職直後の収入ダウンは仕方ないとしても、とくに家族を養っている人は生活資金をまかなえる給与なのか、将来的に昇給が見込めるかをじっくり検討したうえで転職先を決めましょう。
収入減を承知のうえで転職する人も多い
一方で、前職よりも収入が減ることを承知のうえで転職をした人も少なくありません。
収入よりも優先したい条件があり、それを実現できた人は、年収が下がっても「転職は成功だった」と感じています。
たとえば以下のようなケースです。
- 子どもが生まれたのでフルタイムからパートタイマーになった
- 残業が多い会社から定時で帰れる会社に転職した
- 責任の重い仕事から気楽にできる単純作業に転職した
とくに女性は、「これまでの仕事は家事との両立が難しい」「子どもや配偶者との生活を大事にしたい」といった理由で転職をするケースも多いため、収入が減ることは想定内であるようです。
40代で未経験の仕事に転職してよかった人は78.2%
40代で未経験の仕事に転職した146人に「転職してよかったか」聞いたところ、「よかった(33.6%)」「どちらかといえばよかった(45.2%)」が合わせて78.8%という結果になりました。
- 未経験の職場に転職することで、視野が広がり、人生観や価値観も変わった(40歳 男性)
- やりがいのある仕事なのと、時間の融通が利くので、家庭との両立にとても助かっている(40歳 女性)
- 未知の業種には、それまで縁のなかった色々な人がいて自分の価値観が変わった。収入と人間関係どちらも良くなった(40歳 女性)
「視野が広がった」「やりがいがある」「新しいことに挑戦できて仕事が楽しい」など、転職に満足しているという声が多く寄せられました。
前向きな気持ちで転職をした人や、明確な目的をもって転職した人は、総じて満足度が高くなっているようです。
また、職場の人間関係に恵まれたか否かも、転職の満足度に大きく関わっています。
- 「PR職・顧客の管理」と求人にあったが、いざ転職したら新聞の勧誘だった。頑張ってはみたが1週間で退職した(43歳 女性)
- 研修期間にも給与が出るなど良心的な企業だったが、いかんせん仕事内容が自分には合わなかった(49歳 女性)
- あまり考えずに転職してしまった。正直前の仕事に戻りたい(41歳 男性)
「入社前の説明と実態が違った」「仕事が合わなかった」「給与が下がって生活が苦しくなった」といった理想と現実のギャップが、転職を失敗と感じる大きな理由となっています。
本来転職は、「○○の仕事をしたい」「今よりも年収を上げたい」「家族との生活を重視できる環境で働きたい」のように目的をもってするもの。
しかし、前職への不満から勢いで退職すると、仕事を見つけること自体が転職の目的になってしまいがちです。
その結果、自己分析や転職先のリサーチを十分行わず、なんとなく受かった会社に入ったことで、「想像していたのと違う」という結果になってしまいます。
20代・30代に比べて転職のハードルが上がる40代は、「駄目だったらまた転職すればいいや」という考え方は危険です。
転職活動をする際は、転職する目的を明確にし、希望条件や妥協ラインをしっかり決めておくことが重要といえるでしょう。
まとめ
40代で未経験の仕事に挑戦し、今よりもいい待遇を望むのであれば、自身のキャリアやスキルの棚おろし、企業へのアピールの仕方など、十分な準備が必要です。
一方で、アピールできるキャリアがない場合は、社会人経験やヒューマンスキルが求められる営業職や接客業、年齢不問の介護・ドライバーといった仕事も検討してみましょう。
40代の転職が容易ではないことは確かですが、今回のアンケート調査では78.8%が「転職してよかった」と回答しています。
「やってみたい仕事がある」「解雇などにより転職せざるを得ない状況になった」など転職の理由はさまざまだと思いますが、ぜひ年齢を理由に諦めることなく、満足のいく転職となるよう挑戦してみてください。