派遣社員が健康診断を受ける条件は?健康診断を受けられるおすすめの派遣会社をご紹介

  • 「派遣社員だけど健康診断を受けたい」
  • 派遣登録だけでも健康診断は受けられる?」
  • 「健康診断を受けたくない場合は断ってもいいの?」

派遣社員でも健康診断を受けられるのか、健康診断を受けなくてはいけないのか疑問に思っている人も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、派遣社員でも条件を満たしていれば健康診断を受ける必要があります。

なぜなら、労働安全衛生法で「健康診断の実施」と「健康診断の受診」が義務付けられているからです。

ただし、派遣会社ごとに決められている受診条件が異なるので注意してくださいね。

当記事では、

  • 健康診断の種類や内容
  • 健康診断の費用
  • 健診日の勤務状況と給与の有無
  • 健康診断の予約から結果通知が届くまでの流れ
  • 健康診断が受けられるおすすめの派遣会社

などについて紹介しています。

この記事を読めば、派遣社員の健康診断のことが分かり、派遣会社の福利厚生制度である健康診断を活用できますよ。

派遣社員の健康診断は法律で義務付けられている

派遣社員に義務付けられている健康診断は以下の2種類です。

  • 一般健康診断・・・業種や職種に関係なく実施する健康診断
  • 特殊健康診断・・・法律で定められた、特に有害であるといわれている作業現場で働く労働者に実施する健康診断

派遣社員の場合、「一般健康診断」は雇用主である派遣事業者が、一方の「特殊健康診断」は派遣先企業が実施するよう、「労働安全衛生法」で義務付けられています。

派遣社員に健康診断を行う目的は、体調不良の派遣社員を働かせたことが原因で病気や事故が起こり、派遣社員が働けなくなるのを防いだり、有害な作業による健康被害の早期発見と対処を行うためです。

健康診断の実施は派遣社員の健康を守るだけでなく、安全配慮を行う派遣会社や派遣先にとっても大切なことなのです。

「めんどうだから受けたくない」という人もいるかと思いますが、健康診断の受診は労働安全衛生法で義務付けられているため、労働者が拒むことはできません。

派遣社員が受けられる健康診断の種類と検査内容

派遣社員が受けられる健康診断の種類は以下となります。

【一般健康診断】

  • 雇入時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便
  • 特殊健康診断
  • 深夜業務従事者の自発的健康診断

【追加検査(オプション検査)】

それぞれの検査内容を見てみましょう。

雇入時の健康診断

雇入時の健康診断とは、常時使用する派遣労働者を雇い入れる際に行う健康診断のことです。

【雇入時の健康診断の内容】

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部X線検査
  • 血圧測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

雇入時の健康診断は、健康診断項目の省略はできません。

定期健康診断

定期健康診断は、条件を満たしている派遣社員が年に1回、定期的に受ける健康診断です。

【定期健康診断の内容】

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
  • 胸部X線検査、喀痰検査
  • 血圧測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査
  • 心電図検査

【一定の要件のもと、医師が必要でないと認める場合に省略できる検査項目】

  • 身長
  • 喀痰検査
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 心電図検査

特定業務従事者の健康診断

特定業務従事者の健康診断とは、深夜業など特定の業務に従事する派遣社員に対して6ヶ月以内に1回行われる健康診断です。

健康診断の内容は、定期健康診断の項目と同じです。胸部X線検査及び喀痰検査は1年に1回定期に行えば良いとされています。医師が必要でないと認める場合に省略できる項目等についても、定期健康診断とほとんど同じですが、胸部X線検査と喀痰検査は省略できる項目に含まれていません。

海外派遣労働者の健康診断

労働者を海外へ6ヶ月以上派遣するときと、6ヶ月以上海外へ派遣した労働者が帰国した後、国内の業務に就かせるときに行う健康診断のことです。

【海外派遣労働者の健康診断の内容】

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿蛋白、尿糖)
  • 心電図検査
【一定の要件のもと、医師が必要でないと認める場合に省略できる検査項目】

  • 身長
  • 胸部エックス線検査及び喀痰検査
【医師が必要とする際に実施する項目】

  • 腹部超音波検査
  • 尿酸値
  • B型肝炎ウイルス抗体検査
  • 血液型検査(ABO式、Rh式)※派遣前に限る
  • 糞便塗抹検査 ※帰国後に限る

給食従業員の検便

事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者に対して、雇入時または配置替えの際に行われる健康診断です。

【給食従業員の健康診断の内容】

  • 検便検査(赤痢、サルモネラ、O-157)

深夜業務従事者の自発的健康診断

深夜業務従事者の自発的健康診断とは、厚生労働省令に定める要件(自発的健康診断を受信する前6か月間を平均して1月あたり4回以上深夜業に従事すること)に該当する場合であって、深夜業に従事する派遣社員が自身の健康に不安を感じ、次回の定期健康診断を待てない場合に、自ら健康診断を受診できる制度です。

派遣元に健康診断の結果を提出できて、健康保持のための措置を取ってもらえます。

特殊健康診断

特殊健康診断とは、一定の有害な業務に従事する派遣社員を対象に行われる健康診断で、実施義務は派遣先にあります。

主な特殊健康診断は以下のとおりです。

  • 有機溶剤健康診断
  • 特定化学物質健康診断
  • じん肺健康診断
  • 鉛健康診断
  • 電離放射線健康診断

健康診断内容は、

  • 既往歴及び業務歴の調査
  • 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

などに加えて、それぞれの健康診断に必要な検査が実施されます。

追加検査(オプション検査)

追加検査は、基本項目に追加できる検査のことで、検査費用は自己負担となります。

追加検査の一例は以下のとおりです。

追加検査の種類 自己負担額(税率10%)※2019年10月現在
付加健診 4,802円
乳がん検診 1,086円~1,686円
子宮頸がん検診 1,039円
肝炎ウイルス検査 624円

健康診断の受診条件は派遣されていることが大前提

派遣社員が健康診断を受診するためには、派遣されていることが大前提です。

労働安全衛生法では、常時使用する労働者に対して健康診断を義務付けているため、派遣会社に登録しているだけでは受けられないので注意してください。

また、健康診断の受診条件は派遣会社によって異なります。

大手派遣会社3社の受診条件を見ても、違いのあることが分かりますね。

派遣会社 健康診断の受診条件
パソナ
  • 6ヶ月以上の勤務実績があり、協会けんぽの被保険者(有休発生月の20日予約可)
  • 深夜業に従事している(6ヶ月の間に24回以上かつ毎月1回以上22時以降の勤務がある人)
アデコ
  • 健康診断の受診時に雇用契約があり社会保険に加入している
  • 週の所定労働時間が30時間以上
テンプスタッフ
  • 4/1~9/30の期間で所定労働日数の4分の3(90日)以上勤務している
  • 週30時間または月130時間以上の雇用契約がある
  • 8月9日以前から引き続き健康保険に加入している11月1日以降も雇用契約がある

※2019年8月時点

健康診断を希望する人は、派遣会社に受診条件を確認しましょう。

派遣期間が終了しても健康診断を受診できる可能性アリ

派遣期間終了後でも、最大1ヶ月以内に、同じ派遣会社から次の派遣先への派遣が決まっていれば、健康診断を受診できる可能性があります。

本来は派遣契約期間が終了すれば、社会保険の被保険者資格は喪失するのですが、派遣契約の終了後1ヶ月以内に1ヶ月以上の派遣契約が決まっていれば、雇用期間が継続している扱いとなるため被保険者資格は喪失しないからです。

被保険者資格の継続については、細かい条件設定があるので、派遣期間終了後に健康診断を受診したい人は、派遣会社の担当者に確認してくださいね。

派遣社員の健康診断費用は自己負担なし

派遣社員の健康診断の受診費用は、基本的に無料です。

派遣会社には派遣スタッフに健康診断を受けさせる義務があるため、費用は派遣会社の負担となります。

ただし、以下は自己負担です。

  • 追加検査(オプション検査)
  • 派遣会社が指定する期日以外の健康診断

また、健康診断を受診する病院までの交通費については、派遣社員の自己負担としている派遣会社が多いです。

なぜなら、健康診断へ受診するための交通費を派遣会社が負担する義務はないからですね。

交通費の負担を抑えるためにも、自宅近くの病院や、通勤定期が使える範囲内の病院を選ぶといいでしょう。

派遣会社によっては健康診断を受診する病院の指定があるところもあるので、健康診断の案内などをしっかり確認してください。

健康診断を受けている間の給与は出ない

残念ながら、派遣社員が一般健康診断を受診している間の給与は原則としては出ません。

なぜなら、一般健康診断は、派遣社員の健康の確保が目的であって、業務との関連がないからです。

健康診断を受診した派遣社員49人へ、「健診日の勤務状況や給与の有無について」2019年8月にアンケートを行ったところ、給与支給があったのは49人中3人だった結果を見ても分かります。

【調査概要】

  • 調査対象:派遣会社から案内がある健康診断を受診したことがある方
  • 調査期間:2019年8月21日~8月26日
  • 調査機関:自社調査
  • 調査方法:インターネットによる任意回答
  • 有効回答数:49人

検診日の勤務状況と給与の有無

よって、休日や有給休暇を利用した健康診断の受診がおすすめです。

ただし、2020年4月に「同一労働同一賃金」が導入されたことで、健康診断を受けている間の給与の支払いが行われる場合もあります。

同一労働同一賃金とは、正社員と派遣社員の間にある不合理な待遇差を解消する制度です。

待遇の決定方法が「派遣先均等・均衡方式」の場合、同じ仕事をする派遣先の正社員と同じ待遇になるため、同じ仕事をしている派遣先の正社員が業務時間内に勤務免除で健康診断を受診していれば、派遣スタッフも同じように勤務免除で健康診断を受診できます。

同一労働同一賃金ガイドライン(福利厚生)
引用元:厚生労働省

待遇の決定方法が「労使協定方式」の場合でもあっても、派遣会社が健康診断受診時に法定外休暇を付与するケースもあるので、健康診断時の給与の有無について、事前に派遣会社の担当者へ確認しておくといいでしょう。

待遇の決定方式を忘れてしまった方は、契約時の書類や派遣会社の担当者に確認してください。

また、特殊健康診断については、一般健康診断と異なり業務と関連のあるものとみなされます。

よって、特殊健康診断受診時間は労働時間となり、給与の支払い義務があるので、給与が支払われていない場合は派遣会社に申し出てください。

派遣社員は自分で健康診断の予約をしよう

派遣社員が健康診断を受診するためには、自分で予約をする必要があります。

なぜなら、派遣社員が一般健康診断を受ける日は勤務扱いにならないので、仕事の調整や有給休暇を取得するなどして、自分で予定を決めなくてはいけないからですね。

一般的な、健康診断の予約から結果通知が来るまでの流れを紹介します。

  1. 派遣会社から対象者に健康診断の案内が届く
    郵送または登録している派遣会社のマイページ宛に通知が届きます。
    受診資格がない派遣社員に案内が届く場合もあるので注意してください。
    受診資格のない派遣社員が誤って受診してしまうと、健康診断費用を全額負担しなくてはいけません。
  2. 健康診断の予約を入れる
    申込期間内の希望日時に予約を入れてください。
    健康診断を受診する医療機関は、各自で決めるケースと派遣会社の指定するケースがあります。
    集団健診の場合は、派遣会社の指示に従ってください。
  3. 検査キットが自宅へ届く
    健診日の1~2週間前に医療機関から健康診断の案内と検査キットが届きます。
  4. 健康診断を受ける
    予約した医療機関で受診してください。
    所要時間は混み具合にもよりますが、1時間~2時間前後が目安です。
    半日見ておけば安心ですよ。
    保険証や問診票など指定された持ち物は忘れないようにしてください。
  5. 健康診断の結果が届く
    健診日から1~2ヶ月後、自宅または会社へ検査結果が届きます。
    自宅へ届いた場合、後日会社への提出を求められることがあります。
    なぜなら、会社は健康診断の個人票を作成して一定期間保存しなくてはならないからですね。

健康診断が受けられない人は自治体の健康診断を受診しよう

受診対象外で健康診断が受けられない派遣社員は、自治体の健康診断を受診しましょう。

なぜなら、自治体が実施する健康診断は費用が安く、対象年齢に該当すれば無料で受診することも可能だからです。

ただし、国民健康保険の被保険者であること、対象年齢などの条件があるので注意してください。

詳細については、お住まいの自治体に確認してくださいね。

費用がかかっても問題ない人は、病院が実施している健康診断もおすすめです。

健康に働くためにも、定期的に健康診断の受診をおすすめします。

健康診断が受けられるおすすめの大手優良派遣会社を紹介

健康診断が無料で受けられる、大手優良派遣会社をおすすめ順に紹介します。

パソナの健康診断

パソナの健康診断は、6ヶ月継続して勤務している人が対象になります。

勤続年数が1年未満の人の受診は推奨となっており、健診日は有給休暇を使用します。

おすすめポイント
  • 看護師・栄養士へ健康の相談が無料でできる
  • 時間外労働が月80時間を超える人は医師からの健康指導が受けられる
  • メンタル不調を未然に防止できる
健康診断料金 無料
回数 年1回(22時以降継続勤務者は半年に1回)
その他の健康サポート ・ストレスチェック:年1回
・長時間お仕事をしている人の健康指導
・メディカルケアサービス:無料

パソナの派遣登録はこちら

ランスタッドの健康診断

ランスタッドの健康診断は、一定の条件を満たした人が受診できます。

おすすめポイント
  • 24時間・年中無休で健康相談が電話できる
  • 専門家によるメンタルケアカウンセリングが面談で受けられる
健康診断料金 無料
回数 年1回
その他の健康サポート 健康・メンタルサポート:無料

ランスタッドの派遣登録はこちら

まとめ

派遣社員でも受診条件を満たしていれば、健康診断を受けられます。

派遣社員が受けられる健康診断は、

  • 雇入時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便
  • 深夜業務従事者の自発的健康診断

などがあり、費用は基本的に無料です。

健康診断が受けられるおすすめの大手優良派遣会社は以下のとおりです。

  • パソナ
  • ランスタッド

健康診断に重点を置いて派遣会社を探している人は、ぜひ参考にしてくださいね。

最後に当記事の監修者、社労士事務所「志」代表 村井志穂氏からアドバイスいただいたので紹介します。

村井志穂氏からのアドバイス

定期的に行うことが義務づけられている健康診断は、自分自身の健康状態を把握するためにの良い機会です。クオリティの高い仕事を行っていくには、心も身体も健康であることが大前提ではないでしょうか。

逆をいえば、心と身体が不健康であると、良い仕事はできないといえます。

健康管理は仕事をするうえでも大切なことであることを念頭に置き、常日頃から意識できるといいですね。

■監修者プロフィール
社労士事務所志 代表 村井志穂氏

社労士事務所志 代表
村井志穂(むらいしほ)氏
【社会保険労務士会登録番号】第23210035号
【愛知県社労士会登録番号】第2313540号
椙山女学園高等学校 椙山女学園大学卒業

人事労務関連のソフト会社に入社後、カスタマーサポート・マーケティング・システム開発に携わる。

社会保険労務士資格取得後は、システムエンジニアとして勤めつつ、自身の事務所を開業。システム開発の経験を活かした、Office製品を利用した業務効率化ツールの提供も行っている。

当記事をリーガルチェックしていただいた監修者

当記事が法的に問題ないかの視点から、リーガルチェックしていただいた監修者をご紹介します。

弁護士 坂東大士(ばんどう ひろし)氏

澁谷・坂東法律事務所
坂東大士(ばんどう ひろし)氏

(大阪弁護士会 登録番号 47642)

経歴
2009年 関西大学法科大学院 卒業
2011年 司法試験 合格
2013年 大阪弁護士会登録
2019年 澁谷・坂東法律事務所開設

所属団体
大阪弁護士会労働問題特別委員会
租税訴訟学会
関西圏国家戦略特区雇用労働相談センター雇用労働相談員(2015年度)
東大阪商工会議所会員

弁護士の視点から当記事が法的に問題ないかをチェックしていただいております。