紹介予定派遣って本当に正社員になれるの?派遣社員402人に聞いてわかったメリットと注意点

紹介予定派遣とは、社員になることを前提に企業へ派遣される雇用形態のこと。

最大6ヶ月派遣社員として派遣先で働き、その間に派遣先と派遣社員の「この人を雇いたい」「この会社で働きたい」という気持ちが合致すれば、派遣先企業の社員になれる仕組みです。

紹介予定派遣は、

  • 社員になる前に、派遣スタッフとして企業で働ける
  • 派遣会社の後押しを受けられるため採用されやすい
  • お試し期間があるため未経験でも社員になれる

といった特徴があるため、職場になじめるか不安な方や、自力で就活をしてきたけどなかなか採用されないといった方におすすめです。

当記事では、紹介予定派遣を利用したことがある派遣社員402人のアンケート結果をもとに、紹介予定派遣のメリットと注意点について解説していきます。

紹介予定派遣の2つの注意点

紹介予定派遣には、社員登用を目指す人にとってメリットの多い雇用形態ですが、事前に知っておきたい注意点が2つあります。

メリットの前に、まずは注意点から見ていきましょう。

1.紹介予定派遣は必ず「社員」になれるわけではない

紹介予定派遣は面接を経て派遣先で働くため、派遣された時点ですでに社員登用が確定したような気持ちになるかも知れません。

残念ながら、必ず社員になれるわけではありません。

紹介予定派遣として企業で働く期間は、あくまで「お試し期間」だからです。

社員にならなかった人が全体の半数

当サイトが行ったアンケートでは、紹介予定派遣を利用した人のなかで「社員になった人」「ならなかった人」は、ほぼ半々であることがわかりました。

紹介予定派遣から社員になった割合

企業に派遣される期間は「お試し期間」であり、派遣社員にも企業にも「採用を断る」選択肢があるからです。

例えば、派遣社員が「企業の求めるスキルをもっていない」「現場の職員と良い関係を築けない」といった場合は採用されません。

反対に、派遣社員が「思っていたような仕事ではなかった」「職場環境が自分には合わなかった」と感じた場合は断れます。

自分から社員登用を断った人が8割

「紹介予定派遣を利用しても、半数は社員になれないんだ…」とがっかりした人もいるかも知れません。

しかし、下記アンケートからもわかる通り、社員登用を断るのは圧倒的に派遣スタッフ側です。

紹介予定派遣で社員登用を断った人の割合

企業側は、履歴書や派遣会社からの説明で派遣スタッフのスキルや能力をある程度理解し、面接も行ったうえで紹介予定派遣として受け入れています。

そのため、実際に働いてもらった際に受けるギャップが少ないと考えられます。

一方、派遣スタッフは実際に働きながら

  • 社内の雰囲気
  • 仕事量
  • 休みやすさ
  • 残業のあるなし

など、さまざまな角度から長く働ける職場かを判断するため、「自分にはやっぱり合わない」と断るケースが多いと考えられます。

いずれにしても、紹介予定派遣を利用しても「社員登用が保証されるわけではない」ことを知っておきましょう。

2.「紹介予定派遣」=「正社員」ではない

紹介予定派遣からの社員登用は、「正社員」だけでなく「契約社員」の場合もあります。

紹介予定派遣を通して社員になった人の内訳を見ると、正社員よりも契約社員になった人の方が若干多いとわかります。

紹介予定派遣 企業での雇用形態

一方で、紹介予定派遣を利用する人の多くは、正社員になれることを期待しています。

下記は、当サイトが行った「なぜ紹介予定派遣を利用したのか?」のアンケート結果です。

【なぜ紹介予定派遣を利用したのですか?】

  • 正社員になりたいから:105人
  • 職場との相性を確かめたい:77人
  • 正社員になれる近道だから:57人
  • やりたい仕事が紹介予定派遣だった:42人
  • 派遣会社に勧められたから:12人
  • 自分で探すよりラク:11人

402人中-162人と、4割以上の人が正社員になれることを期待して紹介予定派遣を利用していることがわかります。

契約社員は、

  • 賞与や退職金がある
  • 交通費が出る
  • 月給制になる

など、派遣にはないメリットもありますが、契約が更新されなければ仕事を失ってしまう点は派遣と同じです。

また、2020年に「同一労働同一賃金」が導入され、職務の内容や配置の変更の範囲などが正社員と同一の場合、派遣社員も賞与・退職金・交通費などが支給されるようになりました。

アンケート実施時(2019年10月)に比べると派遣社員の待遇は改善されており、派遣社員から契約社員になっても大きなメリットを感じられないケースもあります。

契約社員の労働条件は企業によって大きく異なるので、紹介予定派遣を受ける際は、「正社員なのか?契約社員なのか?」と合わせて、細かい労働条件も確認しましょう。

紹介予定派遣の5つのメリット

それでは、紹介予定派遣のメリットを見ていきましょう。

1.職場との相性を見極められる

紹介予定派遣は、

  • 同僚や上司は良い人か
  • 仕事内容や労働条件は想像と違わないか
  • 本当に自分がやりたい仕事なのか
  • 会社の風土が自分に合っているか

などを働きながら見極められます。

紹介予定派遣としての最大6ヶ月の派遣期間は、いわば「お試し期間」だからです。

企業の方から断られるケースもありますが、数ヶ月実際に働いて、社員に「なる」「ならない」を自由に決められるのは、紹介予定派遣の大きなメリットと言えます。

2.未経験からでも社員になれる

紹介予定派遣のメリットとして多くの人が挙げたのは、未経験でも社員になれるチャンスがあるという点です。

通常、中途採用は即戦力となる経験者を積極的に採用しますが、紹介予定派遣なら企業側も「試用期間」として考えてくれるからです。

  • 事務職が未経験で個人の応募では採用されなかったが、紹介予定派遣を利用したら社員になれた(38歳 女性)
  • どうしても働きたい会社は通常の求人では「未経験不可」だったが、紹介予定派遣であれば応募可能だった(33歳 女性)
〔出典〕独自アンケート調査

未経験だけでなく、年齢や学歴、資格をもっていないことがネックとなり通常の求人では応募できない企業でも、紹介予定派遣からであれば応募できるケースがかなりあります。

個人の応募では思ったように進まず諦めていた人は、ぜひ紹介予定派遣を利用してみてください。

3.大手企業の社員になれるチャンスがある

大手企業は、新卒も中途採用も狭き門となっていますが、紹介予定派遣を利用すれば、憧れの大手企業の社員になれるチャンスがあります。

企業にとって、派遣社員の仕事ぶりや適性を見てから採用の有無を判断できる紹介予定派遣はメリットも大きいことから、”雇用の新しい形”として利用する企業が増えているためです。

なかには、新卒や通常の中途採用の募集をせず、紹介予定派遣でのみ求人募集をしている企業もあります。

  • 働きたいと思った大手企業の中途採用はなかったが、紹介予定派遣では募集していた(30歳 女性)
  • 就活に出遅れて大手企業の募集は終了していたが、紹介予定派遣にはまだ求人があった(22歳 女性)
〔出典〕独自アンケート調査

大手企業や有名企業で社員として働きたい方にとって、紹介予定派遣は、穴場的な雇用形態と言えます。

4.就職活動の手間が減る

正社員で働きたいと思った場合、転職サイトやタウン誌などで仕事を探す必要もありますが、紹介予定派遣ならそういった手間がありません。

希望条件を伝えれば、派遣会社の担当者が条件やスキルに合った企業を見つけてくれるからです。

また、企業との交渉や面接の手配もすべて派遣会社がしてくれるので、自身の時間をそこまで使わずにスムーズに面接まで進めます。

5.履歴書の書き方や面接のアドバイスをもらえる

就職活動では履歴書の書き方や面接に苦戦する人も多いと思いますが、紹介予定派遣の場合は、派遣会社の担当者からアドバイスしてもらえます。

直接雇用が成立すれば、派遣会社には紹介料が入るメリットもあることから応援してもらえます。

履歴書の添削や面接の練習をしてくれる派遣会社もあるので、一人での就職活動に比べて心強いでしょう。

紹介予定派遣の仕組みをおさらい

社員になることが前提

紹介予定派遣は、企業側は「社員としての雇用を視野に入れていること」、派遣社員は「社員として働くことを希望していること」が大前提となります。

  • 一つの会社で腰を落ち着けて働きたい人
  • 収入の安定を望んでいる人
  • 短期間で職場が変わることに不安や面倒さを感じている人

などに向いています。

試用期間は最大6ヶ月

紹介予定派遣として企業で働ける期間(試用期間)は、最大で6ヶ月と派遣法で決められています。

この間に企業と派遣社員の双方が合意すれば、晴れて正式採用となって企業と直接契約を結べます。

合意に至らなかった場合は、その時点で企業との派遣契約も終了となりますね。

まとめ

紹介予定派遣は、

  1. 職場との相性を見極められる
  2. 未経験からでも社員になれる
  3. 大手企業の社員になれるチャンスがある
  4. 就職活動の手間が減る
  5. 履歴書の書き方や面接のアドバイスをもらえる
  6. 社員登用に至らなくても履歴書にキズがつかない

といった多くのメリットがあります。

「社員になるのは敷居が高いと感じる」「自分で就活をしているけど、なかなか採用に至らない」という人は、ぜひ新しい選択肢として紹介予定派遣を試してみてください。

紹介予定に強い派遣会社を知りたい方は、「紹介予定派遣はどこがいい?職種別・エリア別求人数からわかったおすすめ派遣会社ランキング」の記事も参考にしてください。

最後に当記事の監修者、社労士事務所「志」代表の村井志穂氏からアドバイスいただいたのでご紹介します。

村井志穂氏
村井志穂氏からのアドバイス

紹介予定派遣は、実際に働いてみてから企業の社員として働くことを決めれることから、就職後にある、”思っていたのと違った”ということを一般よりは防ぎやすくなります。

学生等のこれから就職を考えている方も、就職後の理想と現実のギャップが不安な場合には、紹介予定派遣を就職へのプロセスの一つとして検討してみてみるのもよいでしょう。

■監修者プロフィール
社労士事務所志代表
村井志穂(むらいしほ)氏

【社会保険労務士会登録番号】第23210035号
【愛知県社労士会登録番号】第2313540号
椙山女学園高等学校 椙山女学園大学卒業

人事労務関連のソフト会社に入社後、カスタマーサポート・マーケティング・システム開発に携わる。

社会保険労務士資格取得後は、システムエンジニアとして勤めつつ、自身の事務所を開業。システム開発の経験を活かした、Office製品を利用した業務効率化ツールの提供も行っている。

【本記事で利用したアンケート調査】

  • 調査対象:紹介予定派遣で働いたことがある人
  • 調査期間:2019年10月1日~15日
  • 調査機関:自社調査
  • 調査方法:インターネットによる任意回答
  • 有効回答数:402人(女性282人/男性119人/未回答1人)