派遣社員も通勤交通費が支給される!派遣社員が通勤交通費をもらう際の注意点

2020年4月の派遣法改正によって、正社員と非正規社員の不合理な待遇差を解消するため「同一労働同一賃金」が導入され、派遣社員も通勤交通費が支給されるようになりました。

「交通費を気にせず仕事が探せる」「今まで負担していた電車賃分を貯金にまわせる」など、通勤交通費(通勤手当)の支給は派遣社員にとって大きなメリットとなっています。

しかし、通勤交通費(通勤手当)の支給は嬉しいことばかりではありません。

なぜなら、

  • 社会保険料の負担増
  • 配偶者控除や社会保険の扶養から外れる可能性
  • 通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれる場合は課税対象になる

などの影響があるからですね。

この記事を読めば、派遣社員に支給される通勤交通費(通勤手当)のことや、支給によって「税金」「社会保険」などにどのような影響があるかが理解でき、損をしない通勤交通費(通勤手当)のもらい方がわかりますよ。

交通費と通勤交通費(通勤手当)の違い

「交通費」と「通勤交通費(通勤手当)」を同じだと思っている人もいるでしょう。

結論から言うと、「交通費」と「通勤交通費(通勤手当)」の違いは、「会社が負担すべきか、従業員が負担すべきか」の違いです。

●交通費
業務命令で、労働契約書に記載されている就業場所以外へ行った際にかかる費用。たとえば、研修や出張の際にかかる移動費用を指します。
●通勤交通費(通勤手当)
自宅から会社までの毎日の通勤にかかる費用。電車代やガソリン代がこれにあたります。

通勤のためにかかる電車賃やガソリン代のことを交通費と呼ぶ人は多いですが、通勤にかかる費用は「通勤交通費(通勤手当)」ということですね。

通勤交通費(通勤手当)の法的な支払い義務はナシ

通勤交通費(通勤手当)には、法的な支払い義務はありません。

なぜなら、労働基準法には「交通費や通勤交通費(通勤手当)を会社側が負担しなければならない」といった規定はなく、民法第485条を見ても「債権者(労働者)の負担」となっているからですね。

●民法第485条
弁済の費用について別段の意思表示がない時は、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させた時は、その増加額は、債権者の負担とする。

派遣社員だけでなく、直接雇用されている正社員やパート・アルバイトなど、すべての労働者に対して通勤交通費(通勤手当)の支払い義務がないのです。

通勤手当が支給される場合は、就業規則に通勤手当を支給する旨や、支給額についての記載があります。

「同一労働同一賃金」の導入によって派遣社員でも通勤交通費(通勤手当)が支給されるようになった

派遣社員は交通費ナシが当たり前だと思っていた人もいるかと思いますが、「同一労働同一賃金」の導入によって、派遣社員でも通勤交通費(通勤手当)をもらえるようになりました。

なぜなら、正社員との不合理な待遇差を解消するため、2020年4月に「改正派遣法」が施行されたからですね。

同一労働同一賃金では、「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」の待遇方式があります。

●「派遣先均等・均衡方式」
・派遣先の同じ仕事をしている社員と同じ待遇になる。
・派遣先の通勤交通費(通勤手当)の規定によって、支給される通勤交通費(通勤手当)の額が変わってくるので注意。
●「労使協定方式」
・派遣会社と派遣スタッフが労使協定を締結する。
・厚生労働省から毎年通達されるデータをもとに算出された一般通勤手当72円以上を時給に上乗せするか、実費で支給。

大手派遣会社の大半は「労使協定方式」を採用しており、通勤交通費(通勤手当)の支給条件は以下のとおりです。

派遣会社 支給方法・条件(2020年12月20日調査)
テンプスタッフ 週5日就業もしくは月20日以上の就業契約の場合、月額上限3万円まで支給。週4日以下就業もしくは月19日以下就業の契約の場合、日額上限1,500円まで支給。
スタッフサービス 交通費別途支給(規定あり)
アデコ 通勤手段で電車を利用し、月16日以上の契約がある方に1ヶ月電車定期代が支給される。
マンパワー 実費支給(規定あり)
ランスタッド 実費支給(規定あり)
リクルートスタッフィング 実費支給(月額3万円上限)
パソナ 実費支給(月額3万円上限)

通勤交通費(通勤手当)を時給には含まず、別途支給としている派遣会社ばかりですね。

派遣会社や求人によって通勤交通費(通勤手当)の支給条件は異なるので、事前に通勤交通費(通勤手当)の有無や支給額など確認しておきましょう。

通勤交通費(通勤手当)に含まれる移動手段と含まれない移動手段

一般的に、通勤交通費(通勤手当)に「含まれる移動手段」と「含まれない移動手段」を表でまとめました。

移動手段 通勤交通費(通勤手当)
電車
バス
ガソリン代
タクシー ×
駐車場代
駐輪代 ×
高速代・有料道路 ×
グリーン車 ×

〇…含まれる、×…含まれない、△一部会社負担あり

移動手段として「最も経済的かつ合理的な経路及び方法」でない場合は、通勤交通費(通勤手当)として認められません。

例)

  • 車通勤:最短距離で通う。遠回りはNG
  • 電車・バス通勤:3ヶ月契約の場合3ヶ月定期を購入し、3で割って1ヶ月の通勤費を算出する(期間が長いほうが定期代が割安になるため)

2km未満の移動は基本徒歩になります。移動に自転車を使って駐輪代が必要になっても、交通費として認められないため自己負担です。

派遣会社よって、通勤交通費(通勤手当)の規定は異なるので契約時に確認しておきましょう。

駐車場代は一部会社負担の場合もありますが、給与所得へ含まれるため課税対象となります。

通勤交通費(通勤手当)をもらう際の注意点3つ

派遣社員が通勤交通費(通勤手当)をもらう際、3つの注意点があります。

  1. 社会保険料の増額
  2. 扶養から外れる可能性
  3. 通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれている場合は課税対象

それぞれの注意点について詳しく説明します。

1.通勤交通費(通勤手当)をもらうことで社会保険料が増額する

通勤交通費(通勤手当)をもらうことで、通勤交通費(通勤手当)ナシのときに比べると社会保険料が増額します。

なぜなら、通勤交通費(通勤手当)は社会保険料を計算する「標準報酬月額」の報酬の範囲に含まれるからですね。

全国健康保険協会では、標準報酬の対象となる報酬を

  • 基本給
  • 役付手当
  • 勤務地手当
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 残業手当

など、労働の対象として現金または現物支給されるものを指しています。

通勤交通費(通勤手当)も含めた報酬で社会保険料を計算するので、たとえば毎月1万円の通勤交通費(通勤手当)が支給されるケースだと、年間12万円がプラス報酬として扱われるため、報酬月額が1等級は上がってしまうのです。

その結果、毎月500円~1,000円前後保険料が高くなる計算になります。

保険料は上がりますが、通勤交通費(通勤手当)を全額自己負担するより負担は少ないです。

注意

都道府県ごとに保険料額は異なるため、詳しくは全国健康保険協会の「都道府県毎の保険料額表」を確認してください。

2.通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれていると扶養から外れるケースがある

通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれていると、扶養から外れるケースがあります。

なぜなら、 通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれていると年収がアップし、配偶者控除が受けられなくなるからですね。

扶養内で働きたい方は、とくに注意しなくてはいけません。

まず、配偶者控除から見ていきましょう。

配偶者控除を受ける場合、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)
  2. 納税者と生計を一にしていること。
  3. 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

引用元:国税庁

注目したいのは、給与収入が103万円以下という条件です。

通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれていると、給与扱いとなり課税対象になってしまいます。

一方で通勤交通費(通勤手当)が別途支給されている場合、通勤交通費(通勤手当)は1ヶ月最大15万円までは非課税となり、通勤交通費(通勤手当)は給与収入になりません。(車両・自転車などは別途限度額アリ)

例えば、以下の条件で働いた場合を見てみましょう。

時給850円 1日5時間 毎月20日勤務 交通費10,000/月

年収は1,140,000円ですが、交通費120,000円分は非課税となるので給与収入は102万円となり配偶者控除を受けられます。

時給950円(交通費を含む) 1日5時間 毎月20日勤務

年収は1,140,000円となり、給与収入103万円以下の条件を満たさないため、配偶者控除は受けられません。

同じ年収でも通勤交通費(通勤手当)が非課税なら配偶者控除を受けられるので、配偶者控除を希望する方は、年収額にもよりますが別途、通勤交通費(通勤手当)を支給してもらえる派遣会社や求人をおすすめします。

「社会保険上の扶養」では、通勤交通費(通勤手当)が別途支給であっても年収には含まれるため、通勤交通費(通勤手当)も含めて年収130万円を超えると、社会保険の扶養から外れます。

年収以外にも従業員数・勤務日数・勤務時間などの条件も総合して判断されるので、社会保険の扶養内で働きたい方は、派遣会社に相談して勤務時間や日数などを調整してくださいね。

3.通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれている場合は確定申告をしよう

通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれている場合は確定申告をしましょう。

給与明細書に「時給に交通費を含む」記載や、時給の内訳として交通費の記載があれば、年末調整や確定申告で還付される可能性があるからですね。

給与明細に通勤交通費(通勤手当)の記載がない場合は、残念ながら課税対象となります。

通勤交通費(通勤手当)を引くと最低賃金より下回る時給でも違法ではない

通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれる求人案件で、実際にかかった通勤費用を差し引くと最低賃金を下回るケースもありますが、違法ではありません。

なぜなら、通勤交通費(通勤手当)は本来支払われなくてもよいからですね。

通勤交通費(通勤手当)が時給に含まれる仕事を検討している場合、事前に通勤費用の負担はいくらか、通勤費用を引いた収入額などをシュミレーションして、納得できる収入になるか判断するといいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

派遣社員も通勤交通費(通勤手当)を支給されるようになりましたが、通勤交通費(通勤手当)の支給による影響があることも理解できたのではないでしょうか。

待遇方式によって通勤交通費(通勤手当)の支給方法も違いますし、派遣会社によって通勤交通費(通勤手当)の上限額や規定などもさまざまです。

また、扶養内で働きたい方にとって、通勤交通費(通勤手当)の支給による年収アップは要注意。

年収が増えることで扶養から外れてしまう可能性があります。

通勤交通費(通勤手当)をもらって損をしないよう、事前に支給方法や上限額、年収額などを確認するようにしておきましょう。

当記事の監修者:坂東大士(ばんどう ひろし)
弁護士 坂東大士(ばんどう ひろし)氏

経歴
2009年 関西大学法科大学院 卒業
2011年 司法試験 合格
2013年 大阪弁護士会登録
2019年 澁谷・坂東法律事務所開設

所属団体
大阪弁護士会労働問題特別委員会
租税訴訟学会
関西圏国家戦略特区雇用労働相談センター雇用労働相談員(2015年度)
東大阪商工会議所会員

弁護士の視点から当記事が法的に問題ないかをチェックしていただいております。